※CAUTION かなり特殊な設定のSSです
  にょ雲雀×でぃのです。すんません・・
  ・なので見ようによってはリバです。ホントすんません・・
  ・大丈夫〜て方は下へどうぞ・・魔が差しました・・



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まさに外道

1


雲雀が何の躊躇も無しにガバリとYシャツを脱いだ。
まぁ男同士だしそんなもんだろうと思いつつも、あの警戒心の塊の雲雀が自分に対して割と無防備に肌を晒すコトに驚いて何とはなしに視線を向けていると、
「…え、」
あれ?と。ディーノは白目を剥きそうになる。
男同士だし…と少し前に思い描いていたばかりなのに。
「?何、どうかした。」
「ど、どどどどうかしたって…おまっ、お前…。」
軽くディーノに背を向けていた雲雀がくるりと振り返る。…そりゃ否応無しに目に映ると言うものだ。ディーノはあわわと声を上げながらとりあえず自分の上着を羽織らせた。
「…着替えるために脱いだのに、何するの。アナタ。」
変な人。
ディーノをそう評した雲雀は何事もないように、それこそまるでディーノの反応だけが異常だとでも言うように、キョトンとこちらを見上げてきた。
オレがおかしいのかこれいやでもロマ達もごくごく普通に同じ部屋に通したってコトは雲雀が男であるという認識はオレだけではないはずであって云々。
「…ねぇ、すごい汗だけどアナタ…何か変なものでも拾って食べた?」
「食わねぇよ!そうじゃなくて、おま…え、その、えぇっと、」
何と言うか口にするのも微妙に躊躇われると言うか…あーだのうーだの唸るディーノに、コトリと首を傾げた雲雀がディーノと自分自身へと交互に目をやり、漸く合点がいったのか。
「―――…ああ。もしかしてこれのコト。」
これ、と言った雲雀が自らの胸に手をやった。
控えめながら実に柔らかそうである…ではなくて、
「…………恭弥…お前ってもしかして…。」
「…そうだった。まだ言ってなかったね。」
それでも尚隠そうともせずに無防備にディーノを見上げてくる。
…ので、ディーノは頭を抱えた。抱えるだけに収まらずその場で蹲った。雲雀は雲雀でそんなディーノに合わせて屈むとこちらを覗き込んで来る。
「…た、頼む、ちょっと距離を置いてくれないか…。」
「何で。」
「と言うかちょっとでいいからひとりにしてくれないか…。」
「何で。」
混乱しすぎて叫びだしそうなのを一生懸命堪えていると言うのに雲雀は全く聞く耳を持たない。それどころか気まぐれな仔猫のようにすり寄って来たと思うとディーノの手を取り、
「…まぁ、言わなくてももうわかってると思うけど。」
ぺと。
「こういうわけだから。」
自らの胸にディーノの手を導いた雲雀が、更にその手を押し付けてくるので。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ。」
その誤魔化しきれない感触にいよいよ思考の限界に陥ったディーノは声なき声を上げると、あっさり意識を失ったのだった。


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*

2

「失礼な人だよね。」
起きぬけのディーノにまず振ってきたのはそんな言葉だった。
何のコトだ、と。ディーノがそう口にするのを予想してたであろう雲雀が、もう一度触ってみる?なんてとんでもないコトを言うもんだから一気に覚醒した。
「……す、すまん…。」
起き上がればベッドの上に寝かされていたのに気がつく。
ディーノが意識を失ったのは当然そんな都合よくベッドの上であるはずがないので誰かが運んでくれたと考えるのが自然だろう。
ロマでも呼んだのかと聞けば、雲雀は何でそんなコトを聞くのかわからないとでも言うように目を見開き、そうして次には呆れたように目を細めると溜息を零した。
「な、何だよ。」
「そんなに僕とふたりが嫌なの。」
「へ?」
「僕がアナタと違う性別なのがそんなに嫌なの。」
「…その言い方は若干誤解を招くぞ。」
「意識を失うくらいだものね。」
ツンと視線を逸らした雲雀は不興を露にしている。
ディーノにしてみれば嫌とかそういう問題ではなく、只単に本気で驚きすぎて頭がオーバーヒートしただけであって。ロマーリオのコトを聞いたのだって雲雀の細身で自分を運べるとは思わなかったからだ。
「…お前が運んでくれたのか。」
「―――アナタひとり引き摺るくらい出来る。」
「ガッツあるな…。」
しかし言われてみれば戦闘中においても、この細身に似合わず重い攻撃を仕掛けてきたりしているわけで。ディーノを吹き飛ばす勢いだったコトを考えればさもありなん…といったところか。
「…グラッツェ。悪かったな。」
「本当にね。」
相変わらず機嫌の悪さを隠そうともしない雲雀に視線をやりながら、あれ?と少しばかりの違和感。機嫌が悪そうなの前述した通りなのだが、何と言うかこう…いつもの機嫌の悪さと違っているようにディーノには見えた。明け透けに言ってしまえば、そう、
(拗ねてる…?)
そもそも本当に気分を害しているのならこんなに大人しく、ちょこんと座っているだけなんてあり得ないのだ。ディーノのいるベッドの傍らにある椅子に腰掛けているだけ、なんて。
そう思うとむず痒いような何なような。
「その…恭弥。」
「変に態度とか改めるようだったら本気で殺すよ。」
「いや、う、そこまでまだ考えてなかったんだけど、」
「わかった?」
「…はい。」
ディーノの性分をあっさり看破したであろう雲雀に先手を打たれた。今のところそういうつもりはなかったが(何せ考えが及んでなかった)、言われてみればゆくゆくはそう言った考えに至るのは想像に容易い。
ディーノの返事に雲雀はちょっとだけ視線を向けてきた、と思えばまた逸らされた。
拗ねてる、拗ねてるよな…そう思っても聞けやしないが。雲雀の態度は拒絶してるように見えてその実構ってと言っているようにも見える。あくまでディーノの主観からすればの話だけれど。
「恭弥…。」
「何。」
「…で、いいのか?」
「いいも悪いも、だから態度変えたらどうするかさっき言ったでしょ。」
「……何で、とか聞いたらダメだよな。」
「―――…ありがちな話だよ。男のように振舞うように育てられて、僕自身も特にそれに異論がなかったってだけ。」
手加減されたくなかったからね。
…というのは勿論戦闘において、だろう。
確かに不満があるのに大人しく言いなりになるようなキャラじゃない。雲雀は。
つまりは雲雀自身納得の上で…と言うより寧ろ願ったり叶ったりな状況だというコトか。
「…しかしそれにしても、」
無防備すぎたんじゃなかろうか。
あんなに堂々と着替え始めるとか。そもそも同室なのを甘んじて受け入れたコトだって。これまでの雲雀の態度から察するにディーノに明かすつもりがあったようには見えなかったのだが――…、ん?
「"まだ言ってなかったね"…?」
――…つまりはその内言う気ではあった、と。ディーノが予兆を見逃していた可能性が無いとは言い切れない。そこまで秘密にしてるわけではないのだろうか。しかし戦闘に支障をきたすと言っていた雲雀が、ディーノという格好の戦闘相手に『言うつもりだった』というのはおかしい気がする。
…わけがわからない。
「とりあえず、部屋変えるか?」
「………態度変えたら殺すって言ったよね。」
「そうじゃなくて、お前が嫌なんじゃねぇかって。」
「嫌だったらとっくに出てってるよ。」
「それもそうか………え、嫌じゃないのか。」
「―――言っておくけど、」

逸らしていた視線をひたりとディーノに向けた雲雀が言うには、
「このコト知ってるのは両親とそれから主治医くらいだよ。
……アナタには、言うつもりだった。…ううん、もうとっくに言ってた気でいた。」

自分の口から言おうとしたのはアナタが初めてだ。

その真意がどこにあるか。恐らくディーノ以外が聞いていたらあっさり見破ったであろうに。
しかしディーノは気づく由もなく、ぽかんと雲雀を凝視するだけだった。


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*

3

態度を変えるなと言われても、こうしてふたりきり同じ部屋で過ごすのは初めてだったため、いつも通りを心がけようとしてもそもそもの前例が無いので難しいというものだ。今まで通りの態度と言っても雲雀とは出会ってこの方ほぼ戦闘尽くめで、日常的な対応の経験が圧倒的に乏しかった。
結果としてディーノは『この時例えば恭弥が男だったとしたらオレはどうするか』を一々考えて行動を起こす…という若干遠回りなコトを行っていた。
……そんなわけで今ひとつの壁にぶち当たっている。
(Yシャツのボタンをもっとしめるように注意すべきか否か…。)
パック牛乳をぐいぐい男前に飲んでる姿を視界の端に入れつつ、決して直視はしないようにディーノは頭を悩ませていた。
そもそも風呂の際にも一悶着あった。
とりあえず先に入らそうとすれば『一緒に入った方が早いよ』と言われ、男同士でも断るかな断る…断るよな、と。ディーノなりの答えを出したのだが思いきり雲雀の不興を買った。
トンファーを構える気配があったので、男女関係無く(勿論子供の頃は抜きとして)今まで誰とも入ったコトないんだと訴えればどうしてか逆に目がすわった。
「アナタ、男も女も経験あるの。」
…どうして急にそういう発想になるのか頭を抱えた。
瞳に危険な色を宿した雲雀が思いきり突進してきたのをかわすべく後ろに下がろうとしたところで、持ち前のへなちょこさを発揮して後ろに倒れた。倒れたディーノにつっかかって雲雀も倒れた。上に被さるように倒れた雲雀をとりあえず今がチャンスとばかりに羽交い絞めにしてみた…つもりだったのだが格好的にどちらかと言えば抱きしめる形になってしまって、やってしまってからもしかしてやばいかこれと冷や汗を垂らしたのだが。
「……………アナタってさ、」
不自然な間の後に雲雀が口を開いたので、これは何かしらの文句が飛んでくるかと冷や冷やしていたが、その予想は外れ雲雀は何かただただ呆れてると言うか…もどかしそうとでも言うか。細くて長い溜息を吐くだけだった。
「…オレが、何だ?」
「――…いいよ、もう。」
雲雀がトンファーを手放す気配があったのでディーノも腕を外した。
それでも雲雀はしばらくそのまま動かなかった。
結局風呂は別々に入った。まぁその内ね、と。何か意味深な言葉を残した雲雀が気にならないでもないが、とりあえず目先の危機は回避出来たのだから構わないだろう。うん。
―――…話を戻して。
兎にも角にも雲雀のラフすぎる着こなしが気になって仕方が無いディーノだった。男として育てられたと言っていたから恐らくその弊害なのだろうが、しかしこれはどうも…。
雲雀に合うサイズの着替えが無かったコトもあり、間に合わせでディーノのYシャツを着ているためダボダボでもある。下はウエストが緩くて落ちてしまうと言う理由で恐らく下着だけだ(さすがに確認出来やしないが)
…コメントに困るシチュエーションである。
部下に言って着替えを用意させれば良かったと後悔しても遅いだろう。例え用意して今更着替えろと言った所で、また何かしら予想外の沸点に触れる可能性がありありと思い描ける。雲雀の発想の突飛さは風呂の件でも前例があるわけだし。
今までも散々難しい生徒だと思っていたが今夜の一件でまた倍増した気がする。
…難しいと言ってもディーノは雲雀をとても気に入っていたし、性別が何であろうと大切にしたいという思いは変わらない。要は嫌と言うワケではないのだ、が。
(…ちょっと戸惑うのは仕方ねぇよな…。)
雲雀はもう全く気にしている素振りは無い。それもそうだろう。元々もうディーノには言っていた気でいたらしい雲雀だ。今更気にする謂れも無いに違いない。
「…何、もう眠いの?」
そんなこんなで黙々と思案していたため、ぼんやりしていたように見えたのだろう。牛乳を飲み終えた雲雀が体重を感じさせない足取りでディーノの座っているソファにまでやって来た。直視しないでいようとした努力もあっさり崩される。
「お前そんな薄着じゃ風邪引くぞ。」
考えるだけ考えたが一応注意した方がいいと判断した。実際雲雀は風邪をひきやすいと聞いていたし、今後も同じコトで悶々と悩むはめになるのもあれだ。
「………咬み殺されたい?」
「お前、だって風邪ひきやすいんだろ?それに成長期って色々不安定なんだし。」
「…布団に入れば問題ないよ。」
「だったら早く入って身体あっためろ。」
「やだよ。」
「お前はオレを困らせたいのか。」
それもあるね。
雲雀は機嫌がいいのか悪いのか判断しかねる表情でディーノの隣に座った。ソファがしなる音が生々しい。思わず距離を取ろうとするディーノの膝の上に、雲雀がそっと手を置くものだから反射的にビクリと身体が強張らせてしまった。
「何、緊張してるの。」
「…んなわけあるか。」
「それじゃあ怖いのかな。」
楽しげに言葉を綴る雲雀が更に距離を詰めてくる。
緊張…は確かに、しているかもしれない。雲雀が次に一体何をしでかすのか、それを考えれば当然の帰結だ。しかしそれよりもディーノを強く揺るがしているのは、
(………くそ、何て目してるんだコイツ…。)
戦闘中のように高揚して濡れた瞳だ。
この目を見ているとどうしてもゾクリとしたものを感じてしまう。高揚…興奮。確かに、それに近いものを。ディーノは今のところ戦闘において、雲雀相手に手を抜いて勝てる程度には余裕がある・…今のところは、だが。しかしそれでも、そんな現状でも、雲雀のこの目を見ていると引き摺られてしまう。箍が、外れそうになってしまう。
勿論、自分の家庭教師である彼に徹底的に仕込まれている以上そう容易く手綱を放すような真似はしない。でもふとした拍子に己の中でブレーキをかけるコトを意識する瞬間がある。その意識が持てなくなる瞬間があるのではないか…そういった意味での恐怖はあった。
雲雀は鋭い。
思わず唾を飲み込むと、雲雀がニタリ。危険な笑みを浮かべた。
「……アナタのその目…表情、いいね。すごく。」
ゾクゾクする。
そう言って舌なめずりをする雲雀に堪らなくなった。
「―――…っ…からかうなよ。」
雲雀の肩に手を置いてそのまま押し戻そうとするのを、許さないとでも言うように体重をかけられる。跳ね除けられる重さだとわかってはいてもその目に射抜かれるとどうしても力が入らない。…ゾクゾクする。それは、こっちの台詞だ。
「からかってなんかないよ。」
「…だったら何だよ。」
「――…わからない?」
距離を置こうとするディーノを雲雀は許さない。
そのまま身体を密着させてくる形でディーノを見上げてきて、言葉に詰まった。背徳的なものを感じてしまって、しかしそういう考えに至るコト自体がそもそもいけないのだと首を振って目を閉じた。そうしてしまえばその視線を直視せずに済む。その勢いで雲雀の身体を引き離す――…引き離そうとして動けなくなった。
するり。
腰から雲雀の手が回ってきて思い切り抱きしめられた。宥めるように背中を撫でられ、胸の辺りに雲雀の息がかかる。…熱い。背筋が震えた。
修行の時だって鼻先が触れ合う程接近したコトはある。それ以外も何度だって、意図せずとも触れている。しかしそこに甘ったるいものは一切無く、あるのは雲雀からの戦闘への飽くなき欲求、殺気……それらを解放出来るコトの快感。凶悪なまでにディーノを追い詰めようとする。それが、今はどうだ。
「…すごい、ドキドキ言ってる。アナタの心臓。」
追い詰めようとするコトには変わりは無い。しかしそこに殺気が込められていないのだ。
ディーノの着崩したYシャツの隙間から、雲雀の滑らかな頬が胸に擦りつけられる。
「…っきょうや。」
「もっと手慣れてるって思ってたんだけど…結構初心なんだね、アナタ…かわいい。」
悪戯に微笑む雲雀に居た堪れなくなる。
ぎゅっと目を閉じたディーノは、どうしてかまともに抵抗するコトすら叶わない自分を自覚していた。それもこれも雲雀が悪い。
「か…わいい、って何だ…。」
「そのままの意味だよ。いいね…すごく。食べてしまいたい。」
かわいい。
連呼する雲雀こそ可愛いとディーノは思う。…とても言えやしないが。
密かに弾んだ息と少しばかり紅潮した頬。雲雀はそれを自覚しているのだろうか。脈の速さだって決して人のコトを言えないのに。
「――…ね、いいでしょう?」
甘えるような発言をしたと思えば、かぷり。
ちょうど心臓の上辺りに歯を立てられる。甘咬みと言って遜色ない。くらくらする。
…中学生にあるまじき色気だ。とてもじゃないが正気でいられない。
思考が、ぼやけていくる。
緩く歯形のついたそこに唇を寄せ、ディーノを逃がさないとばかりに見上げる雲雀が、

「僕、アナタを犯したい。」

そう言って右手をあらぬところに這わせたのを感じた瞬間。
思考と緊張と動揺の限界に達したディーノは、これまたあっさり意識を失ったのだった。


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